プレ更年期/更年期

ホルモン補充療法とは一体なに?

産婦人科を受診する大きな理由の一つが「ホルモンバランスの乱れ」による症状がありますね。

例えば、更年期の時期に様々な不調が現れた、手術で卵巣を摘出したなどの理由で、外側から女性ホルモンを補うことがあります。

今回は、ホルモン補充って一体何なのか、まとめました。

どんなときにホルモン補充療法を行うのか?

女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンは、多くが卵巣から分泌されています。それらの分泌が十分量でないがために様々な症状をきたすことがあり、低下した女性ホルモンを補う目的で行うのが、ホルモン補充療法です。

産婦人科でよくいわれる、ホルモンバランスって何? 生理がなかなかこない、生理がきすぎる、排卵しない、更年期症状、月経前症候群(PMS)などで産婦人科を受診したときに、「ホルモンバランス...

更年期

更年期は卵巣機能が徐々に低下し、それに伴い女性ホルモンも低下していきます。

時折勘違いされている方もみえるので補足しますが、更年期というのは女性であれば誰もが経験する時期のことで、生殖器から非生殖器(老年期)の間の移行期のことを指し、卵巣機能が減退し始めてから消失するまでの時期のことをいいます。

その時期に、月経異常やほてりやホットフラッシュ、倦怠感や抑うつ感といった精神症状などの呈することがあり、診察やいろんな検査で他に異常がない場合に、更年期障害というんです。

更年期自体は、女性であれば誰もが経験する生理現象ですが、
更年期障害となってくると、人によって症状の程度は様々です。

症状が強く、日常生活にまで支障をきたすような場合、女性ホルモンを補充することがあります。

早発閉経や卵巣摘出後(外科的閉経)

通常であれば、50歳前後で閉経する方が多いのですが、
中には40歳以下で閉経してしまう方(早発閉経)やまだ月経があるはずの年齢に他疾患のため卵巣を摘出した方(外科的閉経)もみえます。

そのような方の場合、女性ホルモンが減少したことによる、更年期障害や骨粗鬆症・骨塩減少症などを予防するためにホルモン補充療法を行うことがあります。

外科的閉経の方は、自然閉経の方と比べると、手術によりいきなり卵巣を摘出するため、症状が強く出やすいと言われます。徐々に減って慣れていくという時間がないからです。

閉経したら女性ホルモンはゼロになるの?

閉経したからと言って女性ホルモンはゼロにはなりません。
エストロゲンは肥満細胞からも出ますし、エストロゲン・プロゲステロンともに副腎での合成経路もあります。

また、ホルモンと自律神経はとても深い関係にあります。

更年期障害が強い患者さんは、自律神経が乱れがちだったり、ストレスを抱えていることも多いです。
更年期障害の症状は、自律神経の乱れによる症状とも非常に似ていますし、
ストレスが多くて副腎がうまく働けない状態では、副腎での女性ホルモン合成経路もうまく働きません。

ホルモン補充をするだけではなく、いつか辞めるためにも、自律神経を整えることやストレスケアも同時に行っていく必要があると考えています。

どんなことをするの?

日本では、大きく分けて2パターンの方法があります。

薬の種類や投与方法は何種類かあるので、実際にどんな薬をどのように使うのかは主治医の先生と相談するのがよいでしょう。

エストロゲン+プロゲステロンの補充

基本的に、子宮がある女性の場合は、エストロゲンのプロゲステロンの2つのホルモンを補充します。

エストロゲンのみの補充

子宮を摘出した方は、エストロゲンのみを補充します。

ホルモン補充を行わないほうがいいのは?

ホルモン補充は行わないほうがいい人、行ってはいけない人がいます。

  • 乳がん・子宮体がんのエストロゲン依存性の悪性疾患
  • 子宮筋腫や子宮内膜症
  • 原因不明の不正性器出血
  • 血栓症・血栓性静脈炎
  • 重度肝機能障害糖尿病

病状によって、絶対禁忌・相対禁忌がありますから、
上記既往がある方は確認しましょう。

おまけ

日本では女性ホルモンと言うと、エストロゲンを思い浮かべる方が多く、
また、女性ホルモンが減ってきたとなると、「エストロゲンが足りない」「エストロゲンをなんとかしなきゃ」となる事が多いのですが、
実はもう一つの女性ホルモンであるプロゲステロンも海外では重要視されています。

エストロゲン過剰状態

2つの女性ホルモンは、本来お互いにバランスを取りながら存在しているのですが、エストロゲンが過剰な状態というのが昨今注目されています。

  1. エストロゲンが多い
  2. プロゲステロンが少ない
  3. 両方とも少ないけど、相対的にエストロゲンが多い

という状態です。

このエストロゲン過剰状態が様々な病気の原因になっているというものです。

代表的なエストロゲン依存性疾患は

  • 乳がん
  • 子宮体がん
  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜症
  • 子宮腺筋症

他にに、PMSや更年期とも関連があると言われています。

エストロゲン過剰状態が原因で起こっている症状の場合、補充するのはプロゲステロンでしょうというのが、天然プロゲステロンの補充という考え方です。

でも、これは日本では保険診療内では認められていません。

栄養療法を行っている一部クリニックなどでは扱っている施設もあるようですので、気になった方は探してみてもいいかもしれません。

まとめ

今回はホルモン補充について、どんなときに行うのか、しないほうがいいのはどんな方なのか、エストロゲンではなくプロゲステロンに注目した方法などまとめました。

私は開業医で診察をしているので、ホルモン補充を行うのは更年期障害の方が圧倒的に多いです。

もともと何かしらの不調があって、そこに更年期のホルモンバランスの乱れが重なったことにより症状が強く出ている、という方がほとんどです。

ホルモン補充は私も患者さんに行いますが、なぜ症状が強く出ているのかも説明し、患者さんと一緒にどうしたらいいかを考えて、土台からのケアも同時進行で行ってもらいます。

そうすると、量を減らしても全然平気になってきます。そのまま自然にホルモン補充療法から卒業できますよ。

ABOUT ME
原紗希
原紗希
産婦人科医。今は海外在住のため、対面診療はしていません。 外来診療では検査や薬の処方だけではなく、患者さん一人ひとりに合わせた栄養面や思考面からのアプローチを行う。病気を治すのではなく、人の持つ本来の力を発揮する状態を整える。
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