妊娠・出産

帝王切開のおはなし

はじめに

この動画やサイトでお話していることは、一般的な医学知識に加え、
一産婦人科医の意見や考え方も含みます。

一般的な医学知識については共通ですが、
各病院や主治医によって、それぞれ方針や考え方があります。

ご自身の状態や方針については必ず主治医に確認してくださいね。

帝王切開って危険なの?リスクは?

帝王切開とは…?

最近では珍しい手術ではなくなりましたが、経膣分娩が難しいと判断したときに、お腹を切って赤ちゃんを取り出すことがあります。

日本では4人に1人(25%)が帝王切開で出産をしており、
どちらかといえば、総合病院のほうが帝王切開率は高い傾向にあります。

それはリスクの高い患者さんが集まるため、帝王切開率が上昇するのはある意味当然とも言えます。

帝王切開の危険性

2007年の海外のものにはなりますが、死亡率に関して言えば、
経膣分娩のおよそ3〜5倍とのデータがあります。

日本の妊産婦死亡率は3.4人(10万人あたり)、1年で30人前後と世界的にみてもかなり低い方ではあります。

帝王切開のリスク

手術が決まると、必ず手術の説明があります。

頻度の低いリスクまで説明しなければいけない義務のありますので、
患者さんからしてみれば、怖いことしかない…と思う気持ちもわかります。

おもに説明されるのは、おそらく以下のようなことかと思います。

  • 出血
  • 感染
  • 他臓器損傷
  • 腸閉塞 
  • 次回妊娠時の子宮破裂のリスク
  • 次回妊娠時は帝王切開が望ましいこと
  • などなど

動画ではいい忘れていましたが、静脈血栓塞栓症も挙げられますね。

どんな手術でも静脈血栓塞栓症については説明があるかと思いますが、
妊娠中というだけでも妊娠していない女性に比べると静脈血栓塞栓症のリスクは上がってきますので、注意が必要です。

こうやって聞くと、怖い話しかない…と思われるかもしれませんが、
帝王切開のリスクよりもメリットのほうが大きいときに帝王切開を選択するんです。

だから突き詰めると、赤ちゃんと自分を守り、安全に出産を終えるために帝王切開を選択するということなんです。

帝王切開術の適応は?

大きく、予定帝王切開と緊急帝王切開に分けられます。

予定帝王切開

あらかじめ予定を決めておこなう場合を指します。

  • 前回が帝王切開で今回も帝王切開の場合
  • 筋腫の手術などで子宮にメスを入れたことがある場合
  • 児頭骨盤不均衡
  • 前置胎盤
  • 逆子
  • 性器ヘルペス 
    など

緊急帝王切開

  • 胎児機能不全
  • 常位胎盤早期剥離
  • 子宮破裂
  • 臍帯脱出 
    など

上記ほどは急がないけど、予定外にきまる帝王切開もあります。

  • 分娩停止・分娩遷延(分娩が止まってしまったり長引いているもの)
    など

妊娠高血圧症候群は、

  • 重症度
  • 経産婦さんか初産婦さんか
  • 週数

などなどにより、方針がかわってくるので、一概には言えません。

切開方法は?

こちらも病院によって方針がありますので、すべての方に当てはまるわけではないですが、一般的なことをお伝えしますね。

縦切開

視野が取りやすく、赤ちゃんが出てくるまでの時間が短いため、
緊急時や出血が予想されたり、癒着がひどい可能性があるときなど、視野の確保が必要なときに選択されることが多いようです。

横切開

ビキニでかくれるあたりを切開するので、美容的にも最近はこちらが主流と思います。傷も縦切開に比べるときれいになる傾向があります。

麻酔方法は?

麻酔は、意識を残したままの脊椎麻酔や硬膜外麻酔、
意識を落とした状態にする全身麻酔があります。

背中から麻酔をする脊椎麻酔は、とにかく丸い姿勢を保つことが麻酔をスムーズに終えるコツかと思います。なかなか背中に針をさすことはないし、痛みもありますが、なんとか動かずに丸まってくださいね。

赤ちゃんへの影響を考えて、脊椎麻酔や硬膜外麻酔をまずは選択しますが、
ママの持病や緊急時などは全身麻酔となることもあります。

全身麻酔も呼吸は残した状態のものと、呼吸も抑えて挿管するものとがあります。

麻酔方法も、どの麻酔方法を選択するかも、病院によって方法は様々です。

次回の出産はどうなる?

帝王切開後は子宮破裂のリスクが1%程度あるといわれているため、
多くの病院では次回の妊娠時も帝王切開が選択されることが多いです。

帝王切開後に、経膣分娩での出産を目指すことを
TOLAC(既往帝切後妊娠の経腟分娩トライアル)と 言い、
経腟分娩が成功した場合を VBAC(既往帝切後経腟分娩)といいます。

中には、TORACを受け付けている病院もあるようですが、帝王切開の準備をした状態で、緊急手術にすぐに対応できる病院で行うのが良いでしょう。

また、子宮自体は横に切開を入れますが、既往の疾患や早産児、胎盤の位置などの関係で、まれに子宮に縦に切開を入れることがあります。そういった場合は、子宮破裂のリスクがさらに増すため、次回妊娠時は帝王切開になります。

手術中の感覚は…?

私も帝王切開を受けていますが、不思議な感覚でした。

痛みは感じませんが、なにかしている感覚だったり、腹膜を引っ張られるような感覚はなんとなくわかりました。

子宮の収縮痛もでてくるので、胃のあたりがキューっとなったり、気持ち悪くなったりという患者さんもみえます。

赤ちゃんが出てしまえば、使える薬も増えますので、なにかあったらドクターや看護師さんに伝えてもらうのがいいと思います。

また、痛みももちろんありますから、早めに鎮痛剤などを使ってもらうようにしてくださいね。

日を追うごとに痛みは楽になっていきます。
退院することには、多くの患者さんがかなりスムーズに動けるようになって帰られますよ。

最後に

たとえ妊娠中、特に問題なくスムーズに経過した患者さんでも、
帝王切開になる可能性はゼロではありません。

もちろん赤ちゃんと自分を守るため、安全に出産するために帝王切開を選択するわけですが、何をされるのか・どんな感じなのかわからなくて不安だという声もよく聞きます。

なので、知っておくということも大切かと思い、発信しています。

もし帝王切開となっても、それを想定内にしておくと、過度な不安や恐れを感じる必要がないわけです。

最終的なゴールは赤ちゃんとママ、両方無事で出産を終えること。
帝王切開は赤ちゃんとママを守るための立派なお産なんですよ。

「知っていたからよかった。」
そんなふうに思ってもらえると嬉しいです。

ABOUT ME
原紗希
原紗希
現役産婦人科医。外来診療では検査や薬の処方だけではなく、患者さん一人ひとりに合わせた多方面からのアドバイスも行う。2児(6歳・2歳)の母。
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