ビタミンDは非常に重要な栄養素として近年注目を浴びていますが、妊娠に関わる栄養素としては、まだ葉酸ほどの知名度はありません。身体にとって重要なビタミン・ミネラルはたくさんありますが、今回はビタミンDについて取り上げようと思います。
ビタミンDとは
ビタミンDには2種類あります。植物由来のD2と動物由来のD3です。
よく知られているのは、骨を強くする働きかなと思います。
骨粗鬆症やクル病、骨軟化症を防ぐ効果があり、小児整形外科の先生も大事だとおっしゃっている栄養素の一つになります。
また、免疫ともとても関係がある栄養素と言われており、
免疫を調節する作用やマクロファージなどの免疫に関わる細胞の活動を促し、NK細胞(笑うと増えると言われている)の活性を高める作用がわかっています。
他には、様々なガンや糖尿病、自閉症、花粉症などとの関連も研究されているスーパー栄養素なのです。
妊娠前〜産後までの影響は?
妊娠前
これはたくさんの論文があるので、いくつか紹介します。
妊娠前にビタミンDが充分足りている女性は、ビタミンDが不足・欠乏している女性に比べて、妊娠率・出産率が高く、流産率が高かった。
また、不妊治療中の方を追跡したものだと、同じくビタミンDが充分足りている女性は、ビタミンDが不足・欠乏している女性に比べて、妊娠率(妊娠反応陽性と心拍確認ともに)や出産率が高く、流産率は変わらなかった。
妊娠中
妊娠中のビタミンD不足・欠乏が、ママの妊娠中の合併症や生まれてくる赤ちゃんの状態と関係あるのか、ということについてですが、
妊娠中のママのビタミンDの血中濃度と妊娠中の合併症や生まれてくる赤ちゃんへの影響との関係を調べるために、これまで実施されたいくつかの論文をまとめたものによると
ビタミンD不足の女性は、
- 妊娠糖尿病
- 妊娠高血圧症候群
- SGA児(週数の割に小さい赤ちゃん)
のリスクが高くなり、
帝王切開による出産には関係しなかった
と書かれています。
他にも、ママのビタミンDがしっかりあることで、赤ちゃんの喘息を予防するとの報告、ママのビタミンDが不足することで、赤ちゃんの骨が弱くなるなどの報告もあります。
ビタミンDはどうしたらどれる?
ビタミンDを含む食材
ビタミンDは食事による摂取と皮膚での合成と2つのルートがあります。
ビタミンDを多く含む食材は
魚類 サケ サンマ イワシ ブリ サバなど
きのこ類 きくらげ 舞茸など
その他 卵黄 バターなど
が挙げられます。
ビタミンDを体内で合成するには紫外線が必要
ビタミンDは皮膚で合成することもできます。
そのためには紫外線UVBは必要です。
家の窓や車の窓はUVBはを通さないため、「日当たりの良い窓際で仕事しています」という場合には、効果的なビタミンD合成はできていないでしょう。
患者さんにも、「ランチタイムはできれば外で気分転換してね。」とお話することがありますが、それは直接日光にあたることに意味があるからです。
どのくらい日に当たればいいの?
皮膚でのビタミンD合成能力は、いろんな条件で変わっています。
まずは季節。
夏のほうが冬に比べると必要なビタミンDを合成するまでの時間は短いです。
それから、地域。
高緯度の地域の方が、同等のビタミンDを合成するまでにより時間が必要です。
あとは皮膚の色。
日本人を始めとした有色人種のほうが、白色人種よりもビタミンDは合成しにくいと言われています。
国立環境研究所がだしたデータでは
・両手と顔を晴天の日に太陽光に露出したと仮定し、5.5μgすべてのビタミンDを体内で合成するのに必要な日光浴の時間を札幌、つくば、那覇の3地点で測定
・7月の正午 那覇2.9分 つくば3.5分 札幌4.6分
・12月の正午 那覇8分 つくば22分 札幌76分
いろんな文献をよむと、1日5.5μg(220IU)では少ないような印象ですが、
多ければいい、というものでもなさそうです。
(ちなみに日焼け止めを使うと、皮膚でのビタミンD合成は5%以下まで低下してしまう。)
耐容上限量は1日100μg(4000IU)と言われていますが、
過剰摂取の場合は、高カルシウム血症の報告もありますので、
サプリメントなどを使用する場合は、注意が必要です。
日光浴による皮膚での合成の場合、必要以上のビタミンDは合成されませんので、食事での摂取と日光浴による合成、両方をうまく組み合わせるといいと思います。
紫外線は浴びすぎると、皮膚がんなどのリスクもありますので、
ある程度日光浴をしたら日焼け止めをつかうなど、バランスが大切ですね。
まとめ
ビタミンDはとても重要な栄養素ですが、全体的には不足傾向の方が多いです。
ママ自身の健康のためにも、生まれてくる赤ちゃんの健康のためにも、ぜひ意識してもらえると嬉しいです。
読んでいただき、ありがとうございました。