妊娠・出産

【妊娠中のむくみ】原因と対策

妊娠中とくに後期に、「足がむくんできて、靴が履けなくなってしまった。」「手がむくんで動かしにくい。」という声を聞きます。

今回は妊娠中のむくみについてまとめました。

むくみって何?

細胞内でもない、血管やリンパ管の中でもないところを「間質」と呼びます。
(上の絵でいうと白い部分のことです。)

だいたい体重60kgの方の場合、
約60%にあたる36Lの総体液のうち
 24Lが細胞内液(上の図でいうの緑)
 12Lが細胞外液:9Lが血漿量 3Lが間質
というような分布になっています。

むくみ(浮腫)というのは、間質に水がたまった状態のことをいいます。

妊娠中にむくむ原因は?

心臓や腎臓、甲状腺に疾患のある人はむくみやすい、というのは聞いたことがあると思います。
もちろん、もともと基礎疾患のある方は要注意ですが、
基礎疾患がない方でも妊娠中(とくに後期)にというのはむくみやすくなります。妊婦さんの約60%前後の方がむくみを経験するとも言われています。

むくみが起きてくる原因も様々ですが、とくに妊娠中に起きてくるむくみの原因としては、

  • ホルモンの変化により、水をためやすくなる
  • お腹が大きくなり、足から戻っていくはずの血液やリンパ液が戻りにくくなる
  • 非妊娠時とくらべて動かない(筋肉をあまり使っていない)
  • 姿勢の変化  

などが挙げられます。

むくみには注意したほうがいいの?

むくみの鑑別診断として

  • 特に妊娠の予後には関係しないとされる生理的浮腫
  • 他の疾患を合併している場合の浮腫
  • (もともとむくみがでる可能性のある基礎疾患を持っている)

これらを考える必要があります。

生理的浮腫

妊娠中(特に後期)に60%前後の方が経験するとも言われています。

後述する妊娠高血圧症候群(以前の妊娠中毒症)の診断基準に入っていたのですが、浮腫だけでは妊娠の予後に関係がないということで除外されています。

生理的浮腫であれば、過度に恐れる必要はありません。

他の疾患を合併している場合

ここでは主に、2つ説明します。

妊娠高血圧症候群

妊娠20週以降、分娩後12週までの期間に、高血圧または高血圧に伴う蛋白尿を認めるときに診断されます。(浮腫は診断基準から外されました。)

妊娠前から高血圧だった方は、高血圧合併妊娠となるので、また病態が異なりますが、リスク因子となります。

原因は、胎盤の形成障害と母体要因(肥満・初産婦・他疾患の合併などいくつかあると言われています)とに分けられます。

妊娠高血圧症候群が進行すると、
胎児側:胎児発育遅延
母体側:高血圧・心不全・脳出血・肺水腫・腎機能障害など
    全身に合併症をきたしうる
といった合併症がおこってくるため、早急に精査・治療が必要になります。

急激に進行する浮腫や体重増加がある場合は、気をつけましょう。
(妊婦健診では血圧や蛋白尿はチェックしています。)

下肢深部静脈血栓症

足の血管に血の塊(血栓)ができる疾患です。足にある血栓がとんで肺の血管に詰まると、肺塞栓症といって、命にも関わる疾患を引き起こします。
災害時の車での寝泊まりや長時間の飛行機移動のときに、エコノミークラス症候群に気をつけましょう、と聞いたことはありませんか?それと同じです。

妊娠時は、非妊娠時と比べると、この疾患のリスクが上がると言われています。

(まれに両足にということもありますが)見分けるポイントとしては片側の足のむくみ・腫れとなり、痛みを伴うこともあります。

対策

上述した、他の疾患に合併するむくみである場合、そちらの治療がまずは優先です。

  • 急激に進行したむくみや体重増加
  • 片側の足のむくみや腫れ
  • 痛みや熱感を伴う

こんなときは、必ず主治医の先生に相談してくださいね。

では、生理的浮腫であった場合、なにか自分でできることはあるのか、いくつか提案してみます。

体からのアプローチ

基本的には、

  1. 間質にある水分を血管やリンパ管に戻して
  2. 循環させる

ということがセルフケアの中心になってくると考えています。(冷え対策にも)

筋肉をニュートラルないい状態にして、ポンプさせるということがポイントです。

筋肉はさするだけでも緩んでくれますので、豆腐を撫でるように、やさしくさすってあげるといいですよ。

そのあとに、筋肉を使うといいですね。やっぱり適度な運動というのは大切なんです。
心地の良いお散歩はぜひ取り入れてほしいですね。

これからは、梅雨の時期になり、なかなかお散歩にもいけないかもしれませんので、そんなときは足首をゆっくり回したり、足をワイパーのように揺らしてみたり、とにかく動かすことを意識してみてください。

また、オフィスワークなどで座りっぱなしの場合も、むくみやすいので、
たまには立ち上がって歩いてみてください。

心からのアプローチ

筋肉というのは、緊張状態では固まりますので、やっぱり基本はリラックス。

ぬるめのお風呂にゆっくり浸かると、心も体もほぐれていくのでおすすめです。
(あまり長いこと浸かりすぎてのぼせないように注意してくださいね。)

栄養からのアプローチ

塩分と取りすぎるとむくみやすいと聞いたことはありませんか?
ナトリウムは一緒に水を引っ張るので、体に水分が溜まりやすくなります。

ナトリウムとバランスをとってくれているのが、カリウムです。

海藻類やバナナ・キウイなどのフルーツ、トマト、ハトムギ茶や黒豆茶、ルイボスティーなどにカリウムは含まれています。

まとめ

妊娠中のむくみというのは、60%前後の方が経験する、よくあるトラブルの一つです。

ですが、中には他の疾患の症状の一つとして現れてくることもありますので、急激に進行した場合や片側性のものは早めに主治医の先生に相談しましょう。

対策としては、他の記事でもよく上がっていますが、
十分な睡眠を取り、適度な運動を取りいれ、リラックスタイムを取ることが大切ではないかと考えます。


ABOUT ME
原紗希
原紗希
現役産婦人科医。外来診療では検査や薬の処方だけではなく、患者さん一人ひとりに合わせた多方面からのアドバイスも行う。2児(6歳・2歳)の母。
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